最高裁判所第一小法廷 昭和36(オ)377 判決
主 文
原判決を破棄する。
本件を福岡高等裁判所に差し戻す。
理 由
上告人A外六名の上告理由四について。
原判決は、二つの大審院判例を引用して、「したがつて、Dが本件土地を処分す
るに当り、自己の所有地として処分し、控訴人らのため、その代理人と表示するこ
となく処分し、被控訴人においても、Dが控訴人らのため、控訴人らの代理人と表
示して売買せずに、D自身が処分しうる土地であるとしてDから買い受けたとして
もそのことの故に表見代理の規定の適用が妨げられるものではない。」と判示して
いる。しかし、代理に顕名主義を採るわが民法の下において、代理人が本人のため
にすることを示さない行為を代理行為と認めるわけにはいかない。もつとも、本人
から或る行為を本人としてなすべき権限を与えられたる者が本人としてなしたる行
為を代理行為と認めるべき場合のあることは、原判決引用の大審院判例の示すとこ
ろである。ところが、本件の場合は、原判決の認定によると、訴外Dは本件土地を
自己所有のものとして売り渡し、被上告人(被控訴人)も右Dの土地として買い受
けたというのであるから、引用判例の事案と異り、表見代理行為の存否を論じる余
地がない。果してしからば、原判決が表見代理を認めて本件土地売買の効果を上告
人らについて認めたことは、違法といわねばならない。それ故、論旨は理由あるに
帰し、その他の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。
よつて、民訴四〇七条一項に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
最高裁判所第一小法廷
裁判長裁判官 斎 藤 朔 郎
裁判官 入 江 俊 郎
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裁判官 下 飯 坂 潤 夫
裁判官 長 部 謹 吾
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